【アメリカの歴史】25.[番外]アメリカ政党史概観5/5
第二次大戦後の世界は東西冷戦を基軸に展開し、民主党大統領と共和党大統領がほぼ交互に政権を担当し現在に至る。民主党”Democratic Party”は「社会福祉」を重視した「大きな政府」を展開し、政策的には「リベラル"liberal"」で「連邦重視」とされる。一方共和党”Republican Party”は、「市場重視」の「小さな政府」を志向し、政策は「保守”Conservatism”」で「州権重視」と言われる。
当初は民主党が右派で共和党が左派に位置付けられていたが、20世紀前期に保革が逆転した。南北戦争時に「共和党」が誕生したころは、北部の商工業者、福音主義・敬虔主義のプロテスタントの支持を集める「改革」の党であった。他方の「民主党」は南部の農業主の支持を集めたが、南北戦争で敗れると長期低落に落ち込む。共和党は19世紀には、進展する産業革命にともない、産業資本家やそれと利害関係を持つ西部農民を支持基盤として拡大し、大恐慌までほぼ大統領職を独占した。
民主党はウッドロー・ウィルソンのころから方針転換し、東海岸や西海岸の都市部に住む低所得層や移民に着目し、1920年代になると民主党は都市大衆を基盤とした勢力として本格的に再生されていく。これを加速したのが、世界大恐慌を背景にしたフランクリン・ルーズベルトのニューディール政策だった。
民主党はウッドロー・ウィルソンのころから方針転換し、東海岸や西海岸の都市部に住む低所得層や移民に着目し、1920年代になると民主党は都市大衆を基盤とした勢力として本格的に再生されていく。これを加速したのが、世界大恐慌を背景にしたフランクリン・ルーズベルトのニューディール政策だった。
・「ニューディール政策の内容をわかりやすく説明!結果は失敗だった?」
https://america-info.site/new-deal
ニューディール政策では、社会保障法の制定や高率の累進所得税や法人税の設定など社会主義的政策を進め、F・ルーズベルトは左旋回し、労働者・小農・失業者・移民・黒人などの低所得者層から支持されて、1936年以降の長年にわたる民主党政権の確立に成功した。逆に共和党はルーズベルトへの対抗から保守化を強めていった。
・「白人たちはなぜ貧困化したのか」
https://globe.asahi.com/article/11535361
以後、民主党は東海岸や西海岸の都市部のマイノリティーの支持を集め、これらの民主党が強い州は「青い州」、他方、中西部や南部の人口が少ない農業地帯は共和党の地盤となり、この地域は「赤い州」となった(青は民主党のシンボルカラーで赤が共和党カラーだから)。
しかしこのような通念は、2016年大統領選の共和党候補トランプの登場により大混乱を引き起こす。マイノリティや貧困層の味方と思われていた民主党が、実際にはウォール街の金融資本・大手マスコミ・GAFAと呼ばれるグローバルネット企業などの資金をバックにした大金持ちが支配する党だということが暴露されるようになった。
・「ヒラリーのアメリカ、民主党の秘密の歴史」 https://gyao.yahoo.co.jp/store/title/349176
他方でトランプが掘り起こした支持層は、「ラストベルト”Rust Belt”」と呼ばれる地域の白人労働者や失業者で、この地域はかつて重工業で栄えたが、産業空洞化で斜陽化している。また、中西部の没落した農民などが、山間地域で孤立化原始化して原理主義的なキリスト教の信者になったりした層がある。
彼らはサイレント・マジョリティとして、政治的なボリューム集団としては認識されていなかったところに、トランプの登場が彼らをよみがえらせたとも言える。民主党は、大手資本に支持される中道保守と、改革を求める若者たちに支持される左派に分断され、共和党は、従来の主流だった共和党保守派が、トランプが煽った動きに対応できなくなって分裂している。
アメリカは新たな大きな分断に晒されていると言われるが、これは従来からの「民主党vs共和党」という図式では解決できない。両党とも大きな分裂に晒されているわけで、それは目に見えずに進行していた「大きな分断」が、トランプ登場によって可視化されたということに過ぎない。
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